商社マン シニア活用

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連載企画  「シニアの活用

シニアの活用 その2                      10/08/19

―企業サイドから見たシニアの活用ー  
   (成果主義の功罪)


企業としてシニアの活用を考える前に企業にとって最善の組織・人員配置はどういったものか
を考えてみましょう。 


最近はその負の側面に対してやや批判を浴びて導入当時のほどの輝きはないものの会社経営
で基本的な指針となっているものは「成果主義」と言えます。

旧来の年功序列の人事評価システムに替わるものとして導入された成果主義は端的に言えば
「よく働いた者により多くを報いる」ということで資本主義の原点とも言え、組織の活性化
には欠かせないものとして支持されています。新人事評価システムの中でよく有能な若手の
登用、抜擢がこの流れの中で議論されるわけです。

誤解を恐れずに敢えて単純化すれば、年功序列が組織の安定化(長期的利益の追求)を目指
したものに対し成果主義は組織の活性化(短期的利益の追求)を目指したものといえます。


成果主義を支える背景には単に企業の収益を最大化するという目的だけでなく収益の分配に
関して新たな発言者が出てきたという事情もあります。 ステークホルダーとしての株主の
発言権が強まり、株主への配慮が企業統治の上で重要なポイントとなってきているわけです。

より多くの配当を株主に与えるために組織を活性化し、収益増大を図ることが企業経営者の
命題になったわけです。

この背景にはグローバルな企業競争、資本調達の国際化があり、ステークホルダーとして新た
に採用される従業員、新規に参入する株主にもより分かり易く、合理性・透明性のあるシステム
として社会的にも受け入れられており、この意味からも旧来の年功序列システムに戻るという
ことは考えづらいところです。

では、この成果主義の側面から見たシニアの活用は企業にとってどのような位置づけになる
のかという話になります。

総合商社のような大手企業と中小企業によって事情は大きくことなります。 大手企業が抱える
シニアの人材の評価が、その内部での評価と比べ人材不足に悩む中小企業での評価はかなり
開きがあるものとの思われます。


大手企業はその安定性、ブランド力、実績から新入社員の採用から優秀な素材としての学生を
囲い込むことができ、長年の社内教育を経てシニアの段階ではある程度の均質な人材が数的に
も潤沢に保有しているといえます。 これが、企業の競争力を支える源泉にはなるものの、
その能力を発揮させる活躍の場を設定するには実は大きな組織的な問題があり、多くのシニア
が十分な活躍ができないでいるという現実があります。

一つには経営ポジション不足があり、シニアに向いている経営職が数的に限られている点で、
特に最近の不況の影響を受け、経営の合理化が進み、子会社を含む不採算の関連企業の縮小、
撤退が積極的になされたことによりポジション不足が加速している状況となっているわけです。


又、若手の登用により組織の活性化を図るということでシニアのポジションを若手に譲る動き
も出ており、その分シニアのポジション不足が倍増します。

組織内部でのシニアの活用が進まない中、中小企業の経営者からの視点ではこのシニアは経営
に参加できる優秀な人材、特定分野に秀でた能力のある即戦力としての人材と捉えることが
できます。特に教育訓練期間のいらない即戦力、且つ短期就労は費用対効果を考えたときに
魅力的です。

端的に言えば、シニアの活躍の場は中小企業の経営関連の仕事ということが言えます。
又、逆説的 に言えば中小企業の経営に貢献できないシニアは活用の道がないことになります。


では、中小企業にとって大企業のシニアの活用をどのように捉えることができるかですが、
人材不足問題を抱える中小企業にとって総論としてはシニアの活用は是非ともやりたいという
ことになります。 特に、グローバル展開を目指す企業から見れば商社の優秀な人材は垂涎の
的と言えます。

ところが、この面で注意しなければならない点は大企業で優秀な人材と見なされている人物が
必ずしも特定の中小企業のニーズに合った人材ではない可能性があることです。

それぞれの企業に特有の企業文化があり、仕事の捉え方、進め方、組織、人間関係は大企業の
それとは大分違ったものとなっており、選ばれたシニアといえどもこの文化の壁を乗り越えて
新しい会社に適応する努力が必要で、特に経営者層との折り合いをつけることが最重要と言う
ことになります。

更に問題を複雑にしているのは、万が一不適応と見なされたシニアの取り扱いで、送り出した
企業としても手の打ちようがないというのが実態です。

シニアの個人としての努力に委ねられるということで代替案を持ち合わせない片道切符という
ことになりかねないわけです。 事前の就職先の情報収集とシニア個人の柔軟な適応努力が
重要になってきます。



次回 「シニアの活用 その3」では、シニア自身から見たシニア活用について取り上げて
みたいと思います。

座間 安紀夫

(株)ハート・クオリア代表取締役



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