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  鈴木 晴彦                 12・06・13



 ラオスの未来に想う





ここバンコクに来るまで随分長旅をしてきました。

それはおおよそ3000キロに及ぶバスと列車のインドシナ縦断です。



バスでハノイからラオスの山々を超えビエンチャンまでたっぷりと1泊2日。

そこからメコン川を渡りタイ国境のノンカイに入りました。

最後はバンコク行きの夜行列車で締めくくったのです。


今回のハイライトはバスでのラオス行きです。

まず、乗組員をざっとご紹介しておきます。

ベトナム人、ラオス人に混じってドイツ、ベルギー、イタリア、ドイツ、
イギリス、オランダと様々です。それも20代〜70代ぐらいと年齢層も
広いのです。

30時間の車内は途中休憩があったとはいえ、閉じ込められぱなっなしで
閉口しましたが一つのコスモポリタンの空間で飽きさせません。

ipadで音楽をガンガン聴くカップル、揺れる空間でも読書三昧のシニア夫婦。
私はひとりうたたね寝と車窓からの山並みウオッチングと決め込んでいました。

車内の席は寝そべるのにちょうどいい大きさのリクライニングベッドです。
とはいっても窮屈は否めませんが。

ひとつ、気にかかることがあったのです。それは席の隣のことです。その隣人
は幸か不幸かテニスのシャラポアをキュートにした超美人のスイス人です。

うたたねと決めこんだとは言え、隣人の長い足と動きは気にならないはずはありません。
中年オトコの下心でしょうか。その時のことは想像にお任せして、そんなこんなで、
みな一路ビエンチャンを目指しました。
ヨーロッパ人はそれにしてもラオスが大好きなようです。

なぜこうも惹きつけるのでしょうか。

そのラオスという国は、地図でも見逃してしまうほどインドシナ内陸部に隠遁
しているかのようです。90%が山また山、人口650万の小国です。

港湾はおろか道路もない、正直インフラ貧国です。山と大河の地形から道路
ひとつもつくるのも容易ではありません。

今、それを逆手にとって、ソフトエネルギーパスで「21世紀のシンガポール」
を目指しているのです。

地図をよく見ると大河メコンのなんと50%以上がラオスを北から南まで流れて
いることが分かります。

このメコンの水利がこの国の最大の宝なのです。水力発電の電気を電力不足で悩む
タイなど隣国に売って国家財政を潤しているのです。

このほか木材資源も豊かです。ケナフ事業は日本の製紙会社のもとで大きく育って
います。日本の最大手家具チェーンの委託工場も最近できました。メコンの水底
深く眠る鉱物資源も大化けするほど有望です。

このように水や天然資源が豊富ですから他の国は黙っていません。
中国は道路、国立競技場を無償で提供し、その見返りで虎視眈々と狙っています。
韓国はその後塵を拝しようとトップセールスで躍起づいています。

日本はどうでしょうか。この2つの国と同じ轍をどうか踏まないでほしいと願う
ばかりです。第3の方法を模索することを期待したいものです。

こうして、はるばると分け入った首都ビエンチャンは実に静かなところでした。

世界で第2の閑静な首都と言われる所以がわかるような気がします(1位はブータン
のテンプ―と聞いています)。

それもそのはず信号はまばら、都心を10分も走れば青々と茂った田園地帯が広がります。

りっぱな寺院が都心のランドマークと言ったところです。
大統領府にも大きな寺院がドーンと鎮座しているのですから国民はもとより政治も
仏教に帰依してることが想像できます。

寺院の鐘が辺りからボーンと鳴る音が聞こえてきます。寺院の境内を覗いてみると
なにやら声明が耳に入ります。

忘れてならないのはこの国の一人ひとりの奥深くに利他の精神、慈悲のこころが
根づいていることです。通りすがりの人は立ち止まってみな寺院に向かって静か
に手を合わせます。
傍らでお坊さんの托鉢に深々と頭を垂れてご供物を差し出しているご婦人の姿。
全身で捧げる喜びをかみしめているかのようです。

その光景を見てわたしにはラオス人がまぶしいく映ってしまったのです。

異国から来た旅人を一途に魅了してくれるのです。


ところで、今回ラオスに足を踏み入れておきたかったもう一つの理由があります。
それは、青森の十和田湖畔で「ゆずり葉」という小さな民芸品を開いている田中
陽子さんとの出会いです。


田中さんは旅館の女将の傍ら、ひとり東北の手仕事を巡る旅を20年ずっと続け
宿泊客に作り手の心を伝えています。

生活用品に芸術の価値を伝えた民芸運動の柳 宗民に深く私淑しています。

田中さんはアジアの現地にも広く訪ね、特にラオスの手仕事の工芸品にひとかた
ならなぬ熱い思いを寄せております。

私が2年前に田中さんを訪ねたとき、日本の工芸品に混じってアジアの手仕事の
作品にひときわ興味をおぼえたものです。

田中さんは私にこう語ってくれたのです。
「東北の人ならだれでも知っている昭和の暮らしと生活用具は今ではさみしく
なったけれどラオスにしっかりと根づいて活かされているのよ」と。

ラオスと聞いて、バンコクやシンガポールと都会ばかり歩いていた私は本当の
アジアを知らない堅物と、ガツンと拳骨でたたかれたような思いをしたのです。
それからラオス行きを田中さんと約束してきたのです。

田中さんの以下のサイトをご覧になってみてください。

http://yuzuriha.iza.ne.jp/blog/entry/915319/

さて、このようなラオスの天然資源、、国民の精神性、手仕事の技。

今となってみれば近代国家から大きく出遅れているようなラオス。
でも私たちにいろいろなことを問いけかけてくれています。

エネルギー政策、物質至上主義、経済のグローバル化など。
ラオスが一周も二周も遅れはしているけれども、

どうかこれから「未来」の別の先頭走者として育ってほしいと願うばかりです。
それに日本は手を差しのべることがラオスにとっての近代国家の幕開けのような気がするのです。

これからもじっくり、やさしいまなざしを忘れず見守っていくつもりです。





鈴木 晴彦 (バンコクにて)




以上